2007-04-12 03:04:20
テーマ:旅行記
『どこからおみえですか』
「故郷は福島です::::」
彼の表情には何かを思い出した様子が浮かぶ。
「3年前福島を出て日本海側を南下して鹿児島から沖縄に渡り、西表を経てこの島かー」
『えー 3年も旅してるんですか』
「うん 60歳過ぎてはじめたんでは体力的に働けないと思って」
『えー 働きながら旅してるんですか』
「昔土木関係の会社をやっとったもんで、重機の運転なんかの仕事かなー ユンボとか」
「ん!!アルバイト ん!ん!アルバイト!!!」
『そ! その経営されていた会社はどうなさったん::です?』
「一応形は休業にしてあるだが、実質は廃業かも?従業員が何人も居たもんで、彼らの再就職の手配やら、仕事の整理で1年かかったわ:::::」
「最後にダンプカー、各種重機を売って退職金に当てるまで結構大変だったなー::::」
しばし訪れた沈黙。3人所在無げに海を見つめ其々に思いを巡らす。
わたくし的には結構重い。僅かながらでも人の人生を預かる立場にある者としてやはり彼の決断はあまりにも重い。話題が他人が土足のままで踏み込んではいけない彼の聖域に立ち入ろうとしているのではないか?「場の重さに立ち尽くす」とはこんな場面なのだろう。
この沈黙がシンド過ぎて、無難な話題に戻す。
『どこに泊まってるんですか』
「結構社員寮とか、飯場なんかも空いてるし:::」「その土地、その街で仲良くなる人が出来たりして、そこで世話になったこともあったなー」
この笑顔が彼の払う宿泊賃なのかも。
「時々珍しいものが手に入れば料理して呉れるおばたんもいて::ハハァー ハハァー」
底抜けに明るい笑顔と豪快な笑いが身にまとう虚飾を剥ぎ取る。
吹き抜ける涼風がシガラミに埋まった感性を覚醒させる。
錆び付いた感性を言葉の一撃で地肌むき出しにするのではなく、彼の吐息が柔らかなバイブレーションとなり、人肌の温もりの中で、心の滓を溶解してゆく。
人はヒトによって如何様にも変われるもの。意固地にも残酷にも餓鬼にさえなるものらしい。一方相手次第では翼を得た天馬のごとく自由に大空に駆け上り、より高い精神世界に遊ぶことだって出来るのかも知れない。