2007-07-01 13:57:12
テーマ:院長のつぶやき
梅雨の中休み、太陽が眩しく猛暑を予感させる朝である。
「パパ 今日はアロハよ」家内がカルテを私に差し出す。
「今日は一人か」と私。
「ううん 初めて見る人と一緒。患者はロンちゃんですから、ちゃんと仕事してください」
家内は意味ありげに笑って受付に戻る。
「亀井のロンちゃん どうぞ」
赤いハイビスカスのアロハシャツを着た亀井さんが新しい女性を連れてやってきた。
彼女は黒のタンクトップに赤のミニスカートが似合うかなりの美人。
年の頃は30代後半か。
今日は彼女がプードルのロンを抱えている。
「こ 小谷君。ロンの耳の治療は僕がやるよ。次の患者さんを診てあげて!」
普段、外耳炎の治療は小谷獣医師の担当だが今日は特別に私。
亀井さんは50代前半、仕事は不動産仲介業。主に貸し店舗を取り扱っている。奥さんとは10数年前に別居し、ロンとの独身生活が基本形だ。しかし彼の回りから女性の姿が消えたことはほとんどない。同棲、通い、人妻、私が知っているだけでも両手では数え切れない。彼は根っから優しい人だ。そして何よりもあのこまめさは誰にも真似が出来ない。仲介する物件がテナントであることから、店の造作から開店準備まで徹底して面倒をみる。恐らく今日の連れの女性も最近開店したスナックのママさんに違いない。頼まれると「いや」といえない性格、何でも受け入れる大らかさが彼を不幸にも、幸せにもしている。
「亀井さん ロンちゃんは軽い外耳炎だよ。あさってもう一度来て」
私はロンの治療に手間取っている。
彼女の豊かな胸元が揺れてロンの治療の邪魔をする。
私はもう汗びっしょりなのだ。
「健ちゃん あさっては出張でしょ。私が連れてくるわ」代わって彼女が答える。
『もう 健ちゃんなんて呼んでいやがる』私は一人呟きながら、会計伝票を受付に回す。
一息入れに二階へ上がろうとする私を呼び止める家内の声がきつい。
「ロンちゃんにノミの予防薬出すんでしょ。亀井さんが先生にお願いしたそうよ」
「あ!ゴメン 忘れてた。出して」私はいつも謝っている。
「眼の焦点はどこに合ってるんですかね?まったくもぅ」家内が睨みつける。
私は家内の胸元を覗き込む大きな仕草で逆襲する。