2009-02-05 23:37:09
テーマ:動物病院の四季

澄み渡る青空の美しい朝であった。
僕の大好きな鈴木一家が先週出産したばかりのマルチーズのアイを連れてやって来た。
「先生 アイがだいぶ疲れてる。点滴してやったらと思ってな」
と父さん。
「ここんところ毎年2回の出産では疲れるわさ」
私はあきれながらも腹を立てていない。家族全員を点滴ルームに入れ、スタッフに血液検査と点滴の指示をする。
私にとって鈴木家の子供たちは日本の未来の救いのようだ。
小学校5年生の長男を頭に昨年の春生まれた二女まで、病院へは毎回、家族総出でやって来る。ヤツラは決して父さん、母さんの前には出ない。長男がきょうだいを統率し、長女が兄をフォローし、下の面倒をみる。診察中全員が診察台を取り巻くのだが、病院に付いてくる多くの子供達のように仕事の邪魔をしない。やたらと医療機器に触ったり、僕の大事な熱帯魚の水槽を叩いて気分を苛立たせることも無い。
今日は、血管に点滴の管を入れる間、長男がしっかりとアイを抱きしめる。次男が頭を撫ぜ、声を掛けてやる。長女は好奇心のかたまりのような三男が前に出ないよう肩を抱いている。アイも含めた一体感がこの家族を包み、不思議な安らぎを醸し出す。今やあまり見られなくなった原風景がこの家族にはある。
下への労わりが自ずと上を育てる。
こんな全くの当たり前のことが、鈴木家の犬たちをもはぐくむ。
生まれた子犬たちは両親ときょうだい犬、子供たちと毎日コロコロと遊びながら90日令まで育てられてから新しい飼い主のところに行く。
「出来れば生後九十日までは親、きょうだいから離してはだめだ」
「犬だって乳児期の原体験こそ大事なんだ」
私のアドバイスを忠実に守ってくれる。
この環境の中で育てられたアイの子犬たちは皆、ヒトへの信頼感と明るさに溢れていて人気なのだ。
アイの子犬を待っている人がまだ何人もいると聞く。だからアイはリクエストに答え、産み続ける。風がきんもくせいの香りを含み、秋たけなわである。
