2009-04-17 02:16:50
テーマ:動物病院の四季
鉢植えのカサブランカが匂うこの季節はツバメの雛の巣立ちの時でもある。
毎日のようにかかってくる電話。
「ツバメの雛を拾いましたが、どうすればいいんですか」
どこにでもせっかちな、慌て者はいるものだ。羽ばたきの練習もそこそこに、自分ではもう一人前のつもりで巣を飛び出した子ツバメが軒下に落下する。見かねた家主が保護をしたものの、取り扱いに困り、聞いてくる。
日に数回与えなくてはならないエサ。それは当然生きた虫に限られる。
エサの確保と人間に慣れさせない配慮。そして野生復帰に向けた飛翔訓練。
幾つもの超えなくてはならない障壁を前に、人間に「保護」され死んでいったツバメを思い出し、私は答える。
「速やかに巣に戻しなさい」
と。
殆どの人が私の助言を真摯に聞いてくれる。
そして近所から梯子を借りてきて家族総出で雛を巣に戻している光景が眼に浮かぶ。
及び腰で梯子にしがみついているお父さんの姿が想像される。
『人って・・ 優しいんだ』
人間への信頼感を取りもどす一瞬でもある。
しかしまれにではあるが癪に触る強烈な自称自然保護活動家が登場する。
先日も高校生の娘と母親がヒヨドリの雛を連れてきた。散歩中に捕まえたと言う。まだ不完全な飛翔力しかない雛を草むらまで追いかけて、保護したとおっしゃる。
「あなたの行為は略奪です。近くには必ず親鳥がいて見守っていたはずです。余計なおせっかいなんだ。この雛が一人前に巣立つために、絶対に必要な訓練だったのです。親子の命をかけた試練だったんだ」
そんな私の話には始めから聞く耳を持たない。
「猫に襲われたら可愛そうじゃないですか。先生何とかしてぇ」
挙句の果てが
「獣医さんって動物の味方でしょ。だったら仕事でしょ」
私に保護を強要し、ひたすら雛を置いて行こうとする。
私はこういう人たちを『自己満足型動物愛護論者』と呼んでいる。
『野生に対する基本は優しい無視です』
動物学者小原秀雄先生のこの言葉は余りにも重い。
