石黒獣医科病院

院長室 Toshiharu Ishigro Official Blog

2009-05-02 15:11:46

告白【連載・動物病院の四季】

テーマ:動物病院の四季

【連載・動物病院の四季】

『プシュー』私が缶ビールを開けると、すかさずチャコちゃんが飛んで来ます。

チャコちゃんは5歳。メスのシーズー犬、わが家のお嬢様です。彼女は決して酒好きではなく、私の枝豆を狙って足元に座ります。でも彼女は決して催促などしません。

潤んだ眼差しで私を見上げているだけです。いつまでもその姿勢で、首が痛くなるのではないかと私に心配させて、私を見上げ続けます。隣では家内が横目で私を監視しています。
「パパ! 先ほど、飼い主さんに言ったことは嘘なんですか」
家内の視線が今日も鋭い。

今日の午後、半年で5割も体重を増したミニダックスのスリムが飼い主の工藤の父さんに抱かれてやってきた。病状は嗜好の変化。ドックフードを全く食べなくなったと言う。工藤家は子ども3人の5人家族。母さんはパートの仕事に加え、最近は子供たちの塾、習い事の送り迎えに忙殺され、疲れ果てていると聞く。その結果、父さんが終電車で帰宅する時刻には母さんは高いびきで寝てしまっている。

父さんは一人、冷えたおかずをレンジで温め、スリムを相手にビールを飲む。ひたすらスリムに今日の愚痴を語り、聞いてくれる御礼にと酒のつまみをおすそ分けする。

私は高蛋白、高脂肪のサラミソーセージの給与による脂肪肝を疑い、彼に伝える。

「スリムはもう8歳、人間に置き換えればもう立派な中年です。カロリーは体力の維持量で充分です。サラミが命を縮めています。明日からスリムにはキュウリでもあげなさい」
父さんの境遇への共感と自分自身への後ろめたさで今日の話は歯切れが悪い。

「夜は一緒のベットで寝てはいけません。犬が自立しない原因となります」
朝、子犬の飼い主を指導したこれも我が家では真っ赤なうそなんです。。

わが夫婦はいつもチャコちゃんと川の字で寝ています。

でもチャコちゃんは「飼い主依存症」に陥ることもなく、標準体重を維持して、今日も淡々と私を見上げます。枝豆が落ちてくる期待を込めて。


コメント一覧

初めてコメントさせていただきます。
いつも楽しみにブログを拝見させていただいております。
今年の狂犬病予防巡回接種では先生のお顔が見られなくて残念でした。

今回のコラムはいつも以上に先生の人間臭さがにじみ出ていて、なんかホッとさせられました(笑)

これからも末永く続けてくださいね。

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プロフィール
石黒獣医科医院院長
1948年生まれ
帯広畜産大学獣医学科卒業
石黒獣医科医院 院長
岐阜県獣医師会 夜間救急動物病院 院長
獣医学知識、技術に関しては特筆すべきもの全くなし。
渓流釣りから海釣り、ラン栽培、スキー、登山、マリンスポーツ、「ウドン打ち」に至るまで自称「鬼才」::: 所謂 道楽人。
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