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   <title>石黒獣医科医院 院長ブログ（雑事総論）</title>
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   <title>シアトルにて</title>
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   <published>2010-03-01T19:42:12Z</published>
   <updated>2010-03-01T19:43:12Z</updated>
   
   <summary> 季節は7月、遅い夏がシアトル郊外にもやって来た。 友人宅のテラスでこれを書いて...</summary>
   <author>
      <name>石黒利治</name>
      
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         <category term="動物病院の四季" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
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      <![CDATA[<img src="http://ishiguro-vet.com/pix/seatle.jpg" alt="シアトルにて" width="350" height="250" />

季節は7月、遅い夏がシアトル郊外にもやって来た。

友人宅のテラスでこれを書いている　僕の足元にはこの家の愛犬ジャジャ（シェパードの雑種、雌、4歳）が昼寝をしている。

庭先のモミの枝が不自然に揺れた。すかさず彼女は飛び起き、駆け出す。モミの木の前に作られた花壇に飛び込むかと思いきや、大きく迂回して、大木の根元に達し、頭上に向かって盛んに吼え始めた。恐らくリスなんだろう。

彼女は決して花壇には入らない。花壇の柵の前で必ず諦める。以前モグラを追いかけて花壇の土を掘り起こして御主人にひどく叱られた事を忘れない。

ジャジャは再び僕の足元に戻り、うたた寝を始めた。時々森の木々の擦れる音に耳をそば立ている。遠来の客を野生動物から守るボディーガード役を務めているつもりらしい。何せこの森にはコヨーテはからクーガまでもが生息している。

僕はヒトが犬と共に暮らし始めた太古の森を想像している。

人が犬を家畜化したのは一万五千年前頃といわれている。最近の遺伝子工学を用いた研究により西アジアで数頭のオオカミから現在の犬が作られた事が分かってきた。以来、チワワからセントバーナードまで多様な犬が人の目的に応じて、ある意味では人の勝手な都合により改良されてきた。ある人が犬は人類が作った最高の生きた芸術作品と評した。猟犬は嗅覚、聴力、視力を特化させた狩猟能力を選抜し、愛玩犬は愛らしい仕草、飼い主への依存性、従順性を追求して改良されてきた。

僕は今までこの人類のイヌの改良の歴史を必ずしも了としてこなかった。
何か命を弄ぶ人のエゴのような、うさんくさい臭いを感じてきた。

しかし今、僕は足元でボデェーガードを任じているジャジャの寝息に深い安堵感に満たされている。人が犬を友とした其の動機の一端を感じている。




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   <title>厳冬に舞う</title>
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   <published>2010-02-17T17:21:52Z</published>
   <updated>2010-02-17T17:41:06Z</updated>
   
   <summary>北海道サホロ岳尾根筋に酷寒の風が厳しい。 ゴンドラ山頂駅を飛び出して数秒後に口髭...</summary>
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      <name>石黒利治</name>
      
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      <![CDATA[北海道サホロ岳尾根筋に酷寒の風が厳しい。
ゴンドラ山頂駅を飛び出して数秒後に口髭は凍りつき、顔の皮膚感覚がない。
風は微風だが、気温はマイナス20度を割っている。そして滑降による風圧で体感温度はマイナス50度を下回る。
私は早くも2年ぶりのスキーの滑りに酔い始めている。
意識しなくてもスキーエッジがリズミカルに雪面を捉える。
半世紀あまりを掛けて蓄積した感覚が眼を覚ます。
体はスキーを忘れていなかった。
乾いたエッジ音が心地よい。
しかしこの爽快感が規則正しいエッジの切り替え音から来るだけでないことに気付き始めている。

昨夜の再会。
出会いから40余年振りの同窓会。
昨夜の酔いの名残りなのか。昨夜の談笑の余韻なのか。
日常を飛び抜けて今朝は体も心も軽い。
40年の歳月の重さを跳ね返す旧友の変わらぬ輝きを、何度も何度も思い返して眠った朝の目覚めは爽やかだった。

巡り着た道程に残した数々の悔恨、至らなさへの未練。
それでも尚、昨夜の友の表情は、深い安堵に満たされていた。
静かな諦観を伴う穏やかさが私を包み込んだ。
私は昨夜の宴を囲んだ皆の顔を満たす『身の丈の人生を精一杯正直に生きた落着き。そして明日もその様であろうとする覚悟』に勇気付けられている。その透明さに背中を押されている。

　それは偉大には程遠く、何程でもない、何処にでもある、ありふれた人生ドラマ。しかし一般論では語りえない個別の重さ。

　ある奴が私にしみじみと語った。
「地位も名誉も銭もいらん。若さと体力だけ欲しいな・・・」

世俗の塵としがらみにドップリ浸かり、足を取られながらも今尚遠くを見続ける視線。
自らはこうありたいと思い続ける矜持。　
事に臨んで『それは違う』と何時でもいえる自分を持ち続ける頑固さ。
この一点の拘りが私をあえて悪雪のコースに誘う。
私に圧雪された平穏なコースを避けさせる。

<img src="http://ishiguro-vet.com/pix/ski.jpg" alt="" />
日高山脈の深雪を滑る
—スキーヤーは帯広畜産大学・松井教授—

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   <title>ハワイ島コナコースト【連載・動物病院の四季】</title>
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   <published>2010-02-08T17:53:39Z</published>
   <updated>2010-02-17T17:21:44Z</updated>
   
   <summary> ハワイ島コナ、コーストの乾いた潮風が心地よいホテルのテラス。 家内がスズメやハ...</summary>
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      <name>石黒利治</name>
      
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         <category term="動物病院の四季" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
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      <![CDATA[<img src="http://ishiguro-vet.com/pix/hawai.jpg" alt="【連載・動物病院の四季】" />

ハワイ島コナ、コーストの乾いた潮風が心地よいホテルのテラス。
家内がスズメやハトにパンくずをやっている。
一昨日よりも昨日、そして今朝。スズメたちが我々との距離を縮めてきた。
今一羽のスズメは私の手先３０センチの距離だ。
今度は家内がバターピーナツを噛み砕いている。
『スズメに塩分、バターは良くないんじゃないか』
そんな私の助言に彼女は盛んに口の中で塩分、バターを取り除いている。
『ママ　あのスズメはメタボだぜ』
『毎日、宿泊客からエサをもらっているみたいね。自然界のエサよりはるかに高カロリーよね』そんなことを言いながらも彼女は止めない。
ここの鳥は完全に人が与えるエサに依存し、自然界でエサを探す習性がなくなりつつある。
私はかねてより言い続けてきた。
『自然には絶対に手を触れないようにしましょう』
そんな私の主張とは裏腹に、こともあろうか家内が野鳥を餌付けしている。
人が餌付けする事により、人になつき易い特定の種が繁栄する。
それが本来の生態系バランスを崩している例は世界で枚挙にいとまが無い。
しかし今、私は考えを少々修正しようとしている。
この島ではもう何世代も前から人が餌付けをし、鳥は人に依存して生きる術を獲得した。完全な人為環境に適応した野生。これも進化の一端かもしれない。
人が小鳥に対し「かわいい」「手を差し伸べたい」と思う気持ちが変わらない以上、人は身近な鳥にエサを与え続けるだろう。
だったらまず、我々は人為環境と完全な自然環境を明確に区別して接するルールを作る必要があるのではないか。
触れる事がある程度許される野生とは何なのか。
４本目となるビールが私を思考の迷宮に誘いこむ。
この風が私にビールを空けさせる。


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   <title>北岡のおばちゃん【連載・動物病院の四季】</title>
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   <published>2010-01-29T18:37:14Z</published>
   <updated>2010-02-08T17:53:27Z</updated>
   
   <summary> 「おばちゃん　豚臭い車で悪いな」 昨日の予防接種の残り香、豚舎の臭いが強烈な車...</summary>
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      <name>石黒利治</name>
      
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      <![CDATA[<img src="http://ishiguro-vet.com/photo/kitaoka.jpg" alt="【連載・動物病院の四季】" />

「おばちゃん　豚臭い車で悪いな」
昨日の予防接種の残り香、豚舎の臭いが強烈な車内。僕は北岡のおばちゃんを軽四輪に乗せて家まで送る途中である。

彼女はいつもの如く迷い込んできた家出猫を連れて診察にやって来た。年の瀬、12月の寒空を一時間も掛け、自転車に乗って。

「先生、一週間前私、軽い脳梗塞で入院したんよ」
そんな話聞いてしまったからには又一時間の夜道を自転車で帰すわけにはいかんじゃないか。彼女との付き合いはもう10年以上になる。今まで数多くの家出猫がその終末を迎えるため彼女の家を訪れた。例外なくボロボロにやせ細り、猫エイズあるいは猫白血病に侵され、余命幾ばくも無い体を引きずって北岡宅にたどり着いた。

「先生！又入りこんで来たんよ。もうだめだと思うけど、何とか少しだけ楽にしてやって」
70歳を過ぎた今も働きに出るおばちゃん。その僅かな稼ぎを握りしめ、私を見詰める。

「北岡さん、不思議だよな。猫も最後に頼る処が解るんだ」
「先は見えているが少しでも気分良くしような。じゃーいつも通り、すべて込みの料金で」
そんなやり取りが何回とも無く続いてきた。

しかし今回の車内で語る彼女の話に私は受け答えの言葉も無く、逃げ出したい衝動にハンドル操作がぎこちない。彼女は25歳で夫と死別し、以来3人の子供を育て上げた。昼はスーパーのレジ打ち、夜は工事現場の交通整理で稼ぎ、睡眠時間を3時間に削って、分譲住宅のローンも完済したと言う。

それだけでも並大抵の人生ではなかったはずなのに。今日連れてきた猫に重ねて語る彼女の娘さんの話に私は足腰が立たない。娘さんは2人の子持ち、40歳すぎか。乳がんの全身転移。後少しの命だと言う。

「娘はかなりの痛みなのに、愚痴一つ言わんのだわ。この猫が娘と重なって」

おばちゃんと自転車を下ろし、
「それじゃーまた」

そんなことしか言えない私には今夜の寒風がつら過ぎる。
　
　
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   <title>『動物病院の四季』続編シリーズ連載のお知らせ</title>
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   <published>2010-01-29T06:34:04Z</published>
   <updated>2010-01-29T18:49:46Z</updated>
   
   <summary>一昨年、共同通信の配信で全国の地方紙にて連載を行いました『動物病院の四季』が思わ...</summary>
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      <name>石黒利治</name>
      
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      一昨年、共同通信の配信で全国の地方紙にて連載を行いました『動物病院の四季』が思わぬご好評を頂きました。私はそれをこんな場末の瑣末な日常の取るに足らない拘りへの連帯のエールであったと感じたのです。一瞬で型を失う泡沫のごとき善意がこの世の中を満たしているとの確信でもありました。

幸いにも続編シリーズのオファーを頂き、昨秋、連載が終了しましたのでブログ上での連載を開始します。

回を重ねるごとに自らの股間の矮小さを恥じ入るがごとき思いが沈殿します。

―身の丈を超えず地を這う―そんなことを自らに再確認する厳冬の夜です。

御高覧、ご講評をいただければ幸いです。
　
　
　
      
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   <title>新年明けましておめでとうございます。</title>
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   <published>2009-12-31T17:04:33Z</published>
   <updated>2010-01-01T20:06:02Z</updated>
   
   <summary>今　新年午前一時半。 おせち料理の『黒豆』の鍋の火加減を気にしつつ、旧年中の御厚...</summary>
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      <name>石黒利治</name>
      
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      今　新年午前一時半。
おせち料理の『黒豆』の鍋の火加減を気にしつつ、旧年中の御厚情への感謝と、新年の御挨拶を申し上げます。

背中で暖炉の日が燃えています。ポカポカと暖かい！
今僕はこの暖かさを昨年の一年に重ねています。
一度は別れを覚悟した家内が12月14日に無時帰りました。
一年に及ぶ病との闘いに耐え、元気に戻りました。
今僕は『家族が揃って迎える大晦日』の極めて当たり前の日常の幸せを噛締めています。
当たり前の、去年と何一つ変わらない大晦日がいかに大切なものか！
それが多くの善意に支えられた結果である事に感謝の言葉を失っています。
皆さんの支援あっての2009年でありました。
省みれば家内にとって苦闘の一年も我が家にとっては豊饒の一年であッたかもしれません。
『ヒトの温み』を実感させてくれた一年でありました。
 
皆さんの御好意を少しでも大きくして更に多くの人々に返してゆく。
それを重圧ではなく、励みとすべき覚悟をする新年です。
更なる叱咤激励をお願いし、ご挨拶とします。

石黒獣医科医院　　院長　石黒利治



      
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   <title>夜間救急動物病院が開院します</title>
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   <published>2009-07-02T05:14:53Z</published>
   <updated>2009-07-02T05:22:42Z</updated>
   
   <summary> 7月5日、岐阜県獣医師会　夜間救急動物病院がオープンします。 大切なあなたの「...</summary>
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      <![CDATA[<img src="http://ishiguro-vet.com/pix/yakan.jpg" alt="夜間救急動物病院" width="470" height="350" />

7月5日、岐阜県獣医師会　夜間救急動物病院がオープンします。

大切なあなたの「家族」を、いつも見守りたい。
そんな思いから、岐阜県中の獣医師が協力してできた、 夜間動物病院です。

夜間の事故や急病に対応します。


岐阜県獣医師会 夜間救急動物病院
<strong>TEL:058-242-9915</strong>
※来院前に必ずお電話でご連絡ください。

〒500-8258 岐阜市西川手6丁目41番地
診察時間：午後9時から翌朝1時まで 年中無休

<a href="http://www.gifuyakan.jp/" target="_blank">http://www.gifuyakan.jp/</a>


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   <title>見守るという事の重さ【連載・動物病院の四季】</title>
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   <published>2009-06-13T04:01:29Z</published>
   <updated>2009-06-13T04:04:04Z</updated>
   
   <summary>木枯らしが電線を鳴らす厳冬の朝。マルちゃんが厚い布団に包まれ、父さんに抱かれて今...</summary>
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      <name>石黒利治</name>
      
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      木枯らしが電線を鳴らす厳冬の朝。マルちゃんが厚い布団に包まれ、父さんに抱かれて今日もやって来た。

マルちゃんはゴールデン・レトリバー、雄の１２歳。私を慕ってくれる数少ない患者である。２年前にミエローマという骨髄の悪性腫瘍を発症した。岐阜大学動物病院と当院、そして飼い主さん、三者の緊密な連携により、これまで奇跡的に病状がコントロールされてきた。

マルちゃんは度重なる抗がん剤の副作用に耐え、佐合さんは片道１時間半も掛かる大学病院への通院と治療費負担に耐え、ここまで踏ん張って来た。

『驚異的な治療成果です。本当によく頑張ています』腫瘍科の教授が舌を巻いていた。
しかしもう最終章を迎えようとしている。

昨年の暮れ、大学への通院が体力的に無理となり、私が幕引きを引き受ける事になった。
「佐合さん、申し訳ないが限界みたいだ。共に安らかな最後の日々を考えようや」
彼は私がボソッと切り出した宣告に優しく頷いた。お互い最後の覚悟をしてからもう一ヶ月が経つ。

もう起き上がることも出来ず、食欲も殆どない。夜は佐合夫婦と川の字に寝ている。夜中に寝返りを要求して鳴き、オムツが濡れたことを訴え、喉の渇きで鳴くと言う。

連日の寝不足で父さんの眼が充血している。母さんは私の下品な冗談への突っ込みにキレがない。しかしこの夫婦は何時ものように明るく振舞い、愚痴も言わない。

これが静かな諦観なのか。彼らは穏やかな微笑のなかにある。

『苦痛を長引かせる延命治療はしない。時には恣意的な幕引きが患者と飼い主のために必要なのだ』
それが私の基本原則であった。

しかし何十回と同様な場面を経験してきた筈なのに私は青二才のままだ。

私は一人肩を落として、為す術もなく栄養剤の点滴をしながら、繰り返し言葉を探しては呑み込んでいる。

『見守ることに徹し、その重さに耐える』

そんな佐合さんの覚悟には程遠く、私は今日も診察室を意味もなく歩き回っている。



      
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   <title>炎【連載・動物病院の四季】</title>
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   <published>2009-06-10T03:52:11Z</published>
   <updated>2009-06-13T04:05:16Z</updated>
   
   <summary> 今年の冬最初の木枯らしが電線を鳴らしている。私の背中で燃えている暖炉の火が心地...</summary>
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      <name>石黒利治</name>
      
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      <![CDATA[<img src="http://ishiguro-vet.com/pix/0610.jpg" alt="【連載・動物病院の四季】" width="470" height="350" />

今年の冬最初の木枯らしが電線を鳴らしている。私の背中で燃えている暖炉の火が心地よい。

20年前家を新築する折、あちこちの予算を削り暖炉を作った。薪の確保に四苦八苦しながらも、幸い今日も暖炉は燃えている。

『火に当たりにおいで下さい』
遠くの友人をこんな言葉で誘いたかった。
『ご馳走するからお訪ね下さい』
ではない。

訪れたヒトを先ずは囲炉裏端の一等席に誘い、火に当たってもらう。昔見た映画の一シーンに憧れてきた。何故か、そんなもてなし方に人どうしの根源的な労りを感じてきた。

青い炎の樫、静かだが力強い炎のミズナラ、かすかな芳香を放しつつ燃える山桜。お互いに何も語らず、只黙って炎を眺めていても、その沈黙は暖かい。炎はヒトの気持ちを優しくする。

今、我が家のお嬢様が私の踵をまくらに眠っている。

シーズー犬、メス、5歳のチャコちゃん。右足に伝わってくる彼女のいびきの振動の心地よさに私はしびれた右足を座り直しもせず、じっと耐えている。傍らで家内が何時ものごとく就眠前の夜寝をしている。先程本を開いて座ったと思ったら、もう寝ている。

淡々とした性格のチャコちゃんは決して私のご機嫌を伺うようなことはしない。おもちゃを持ってきて『遊べ』と催促することも、『抱っこ！抱っこ』と私の手をカリカリすることもない。気分が乗れば今夜みたいに私のそばに来る。でも私が病気をしたり、気分を落ち込ませている時は必ず来てくれる。

『私が風邪で寝込んだとき、この子（犬）が看病してくれたんです』
そんな話を飼い主さんから何度も聞いた事がある。人をいたわる犬がいることの静かな感動。

チャコちゃんはお尻でわずかに私に触れるか、足を枕に眠る。私はチャコちゃんのこのさり気なさをたまらなく気に入っている。テレビは消してある。薪の弾ける音と、暖炉の煙突を振るわせる木枯らし、そしてチャコちゃんと家内のいびき。

藤沢周平の時代小説を手に、古酒を舐めながら私の晩秋が更けてゆく。


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   <title>賞味期限切れ【連載・動物病院の四季】</title>
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   <published>2009-06-08T03:43:57Z</published>
   <updated>2009-06-13T04:05:40Z</updated>
   
   <summary> 「パパ。このせんべい、賞味期限切れだけど、食べるぅ？」 台所で家内が聞いている...</summary>
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      <name>石黒利治</name>
      
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         <category term="動物病院の四季" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
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      <![CDATA[<img src="http://ishiguro-vet.com/pix/0605.jpg" alt="【連載・動物病院の四季】" width="470" height="350" />

「パパ。このせんべい、賞味期限切れだけど、食べるぅ？」
台所で家内が聞いている。
「腐ってないなら、食えると違うか」
銀杏を焼いている私は火鉢から顔を上げ答える。

煎餅も銀杏も、市内の中学校教諭の田中先生からもらった。銀杏は学校で拾ったものだという。先日、うさぎの治療費の代わりにと申し訳なさそうに持ってきた。きっと、予算がないのだろう。わずかな銀杏の異臭が、彼と初めて会った十三年前の夕暮れを思い出させる。

あの日、彼は大きな段ボールに患者を全部詰め込んでやって来た。

「僕　東南中学の田中と申します。学校で飼っているウサギですが、昨日も２羽死んで。こいつらもひどいことに」

申し訳なさそうに開けた段ボールに詰め込まれたウサギたちは悲惨を極めている。

千切れた耳、化膿して腫れ上がった前肢と全身には無数の引っ掻き傷。下痢の悪臭。私の激怒は瞬時に我慢を超える。

「あんたらぁに動物を飼う資格はない。こんな惨状を子供たちに見せて、何が教育なんだ。バカか」

箱に入れられているエサをみた私はもう収まらない。

「ウサギが草食動物なのも知らんのか。ウサギに給食のパン食わしとるんか」
こんな悔しさを味わった獣医師はほかにも多数いた。やがて獣医師の声は行政を動かし、岐阜県では全国に先駆けて教育委員会と県獣医師会の委託契約による学校飼育動物支援事業がスタートした。

毎年学校を巡回して飼育管理を指導し健康診断を行う。時には施設の更新を教育委員会に提言する。飼育舎の広さに見合った羽数を飼い、オスとメスを分ける。毎日の掃除と適切な食餌を徹底する。

ただ、それだけで十三年前の惨状は姿を消した。最初は散らかった台所をのぞかれる主婦に似た戸惑いを見せた先生たちが、気楽に相談に来るようになった。

当時を思い出しながら、湿ったせんべいを食べた私は家内に語りかける。
「あの時は田中先生に言いすぎたかなぁ」。
彼女がすかさず答える。

『今日の飼い主さんにも言い過ぎよ』

私は今日もこの人に一番気を使っている。


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   <title>爺様と猫【連載・動物病院の四季】</title>
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   <published>2009-05-14T06:16:44Z</published>
   <updated>2009-05-14T06:21:43Z</updated>
   
   <summary> 夏の最後を焼き尽くす太陽が朝から眩しい。 爺様がオンボロ自転車をキーコ、キーコ...</summary>
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      <![CDATA[<img src="http://ishiguro-vet.com/pix/0515.jpg" alt="【連載・動物病院の四季】" width="470" height="350" />

夏の最後を焼き尽くす太陽が朝から眩しい。

爺様がオンボロ自転車をキーコ、キーコと鳴らしてやって来た。老猫のタマは、荷台にくくり付けたダンボール箱から、悠々と顔だけを出し、逃げようともしない。

「先生、おはよう。こいつ、また昨日から飯食わないだわ」
爺様の野良着は汗でびっしょりだ。

タマは雑種のメスで十七歳。爺様の連れ合いの婆様が近くの神社の裏で拾い育てた。その婆様は、七年前に先立ち、タマは形見でもある。かつては村の名ハンターと呼ばれ、ネズミ、蛇は言うに及ばず、雉まで引きずってきた。

今では往年の筋骨隆々の体躯も骨と皮にやせ細り、もうネズミの動きにはついて行けない。しかし嘗ての栄光が忘れられないのか、狩りを止めようとせず、最近のお相手はもっぱら縁の下のツチガエルだそうだ。

「院長、マンソンの虫卵だらけですよ。点滴の用意できました」
スタッフが顕微鏡を見ながら伝える。　

「爺ちゃん、例のカエルを食うと腹に沸くサナダ虫で腸の中は一杯みたいよ。元々、小便作る腎臓が具合悪いのに、下痢では体が持たないわ。点滴終わるまでタマに付き添ってくれるか」
爺様は二十年前に農協を定年退職して、三反の田んぼと少しばかりの畑を耕やし暮らしてきた。息子夫婦はずうっと前に名古屋に出て行って今では猫との2人暮らし。

僅かな年金を分け合い、夜はタマを相手に酒を飲む。野良仕事にも一緒に出かけ、常にお互いを視界の中に入れている。点滴中、タマの頭を撫で続けている爺様。一人と一匹は見つめ合っている。

私は診察の合間を縫って、爺様のいつもの話しに相槌を打つ。若い頃、銭のない農家に肥料の請求書を出さず組合長から処分された話や、子だくさんの後家さんの田んぼを手伝って噂になった話。タマが捕った雉は美味かった話。

ボロボロの老猫が支える独居老人。
徹底して「狩り」に拘わるネコに自分の足跡重ねる爺様。

支えあう片隅の命に励まされる私である。


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   <title>告白【連載・動物病院の四季】</title>
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   <published>2009-05-02T06:11:46Z</published>
   <updated>2009-05-14T06:16:34Z</updated>
   
   <summary> 『プシュー』私が缶ビールを開けると、すかさずチャコちゃんが飛んで来ます。 チャ...</summary>
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      <![CDATA[<img src="http://ishiguro-vet.com/pix/0430.jpg" alt="【連載・動物病院の四季】" width="470" height="350" />

『プシュー』私が缶ビールを開けると、すかさずチャコちゃんが飛んで来ます。

チャコちゃんは５歳。メスのシーズー犬、わが家のお嬢様です。彼女は決して酒好きではなく、私の枝豆を狙って足元に座ります。でも彼女は決して催促などしません。

潤んだ眼差しで私を見上げているだけです。いつまでもその姿勢で、首が痛くなるのではないかと私に心配させて、私を見上げ続けます。隣では家内が横目で私を監視しています。
「パパ！　先ほど、飼い主さんに言ったことは嘘なんですか」
家内の視線が今日も鋭い。

今日の午後、半年で５割も体重を増したミニダックスのスリムが飼い主の工藤の父さんに抱かれてやってきた。病状は嗜好の変化。ドックフードを全く食べなくなったと言う。工藤家は子ども３人の５人家族。母さんはパートの仕事に加え、最近は子供たちの塾、習い事の送り迎えに忙殺され、疲れ果てていると聞く。その結果、父さんが終電車で帰宅する時刻には母さんは高いびきで寝てしまっている。

父さんは一人、冷えたおかずをレンジで温め、スリムを相手にビールを飲む。ひたすらスリムに今日の愚痴を語り、聞いてくれる御礼にと酒のつまみをおすそ分けする。

私は高蛋白、高脂肪のサラミソーセージの給与による脂肪肝を疑い、彼に伝える。

「スリムはもう８歳、人間に置き換えればもう立派な中年です。カロリーは体力の維持量で充分です。サラミが命を縮めています。明日からスリムにはキュウリでもあげなさい」
父さんの境遇への共感と自分自身への後ろめたさで今日の話は歯切れが悪い。

「夜は一緒のベットで寝てはいけません。犬が自立しない原因となります」
朝、子犬の飼い主を指導したこれも我が家では真っ赤なうそなんです。。

わが夫婦はいつもチャコちゃんと川の字で寝ています。

でもチャコちゃんは「飼い主依存症」に陥ることもなく、標準体重を維持して、今日も淡々と私を見上げます。枝豆が落ちてくる期待を込めて。


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   <title>猪肉【連載・動物病院の四季】</title>
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   <published>2009-04-23T17:47:18Z</published>
   <updated>2009-04-26T17:56:29Z</updated>
   
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      <name>石黒利治</name>
      
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      <![CDATA[<img src="http://ishiguro-vet.com/pix/0424.jpg" alt="【連載・動物病院の四季】" width="470" height="350" />

「先生　居るかぁ」
休憩時間に玄関で誰かが呼んでいる。昼寝を邪魔された私は不機嫌に応対する。
「こんな時間にどうしたん。今診療所を開けるから」
「いつも世話になるんで、これ・・。先生、やっと仇を取ったよ」
ハンターの安江さんが新聞紙で包んだ重そうな荷物を診察台に投げ出す。
べっとりと血がしみた新聞紙の中は私の大好物、猪（いのしし）肉である。

昨年の刈入れの季節に、安江さんの集落は猪の大被害にあった。連日のように稲田が荒らされ、イモ類まで食べつくされてしまい、収穫ゼロの農家まで出た。おまけに役場からの要請で有害鳥獣駆除に出た安江さんの相棒・猟犬のブチは猪の鋭い牙で腹を割かれて死んだ。

近年、猪の農業被害が増加している。ネットや電気柵で農地を囲っても猪は直ぐに学習する。柵の下にトンネルを掘って侵入し、刈り入れ前の一反の田んぼが一夜で全滅する。猪は稲穂をくわえ、籾だけを器用にすき取る。食べるだけで帰ればいいのに、猪は収穫前の硬くなったわらを使って体の掃除を始めるのだ。体表に付いたダニを落とすため自分の体をローラーのように回転させ、田んぼ中を転げまわる。これによる被害は食害より遥かに大きい。

猪や熊が人里に出没するようになった原因はほぼ定説化しつつある。雑木と呼ばれてきたナラ、ブナの原生林がスギやヒノキの人工林となり、山全体が下草も生えない貧弱な植生になった。そして山に猪の餌がなくなり、彼らは里に降り下り、田畑を荒らすようになった。

しかし私はそれだけではないと思う。

かつて安江さんの住む村の住民は殆どハンターであったが、近年、彼等の多くが高齢化し鉄砲弾が当たらなくなった。各地の山間の村でハンターが激減している。

人里と人跡未踏の大自然との間に広く存在した、ヒトと野生が共有する『里山的自然環境』。そこが村人の猟場であった。

『一方の主役がいなくなったもんな』

そんな事を考えながら、私は猪鍋の夕ご飯を楽しみにしている。
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   <title>巣立ちの季節【連載・動物病院の四季】</title>
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   <published>2009-04-16T17:16:50Z</published>
   <updated>2009-04-23T17:22:16Z</updated>
   
   <summary>鉢植えのカサブランカが匂うこの季節はツバメの雛の巣立ちの時でもある。 毎日のよう...</summary>
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      鉢植えのカサブランカが匂うこの季節はツバメの雛の巣立ちの時でもある。

毎日のようにかかってくる電話。
「ツバメの雛を拾いましたが、どうすればいいんですか」

どこにでもせっかちな、慌て者はいるものだ。羽ばたきの練習もそこそこに、自分ではもう一人前のつもりで巣を飛び出した子ツバメが軒下に落下する。見かねた家主が保護をしたものの、取り扱いに困り、聞いてくる。

日に数回与えなくてはならないエサ。それは当然生きた虫に限られる。
エサの確保と人間に慣れさせない配慮。そして野生復帰に向けた飛翔訓練。

幾つもの超えなくてはならない障壁を前に、人間に「保護」され死んでいったツバメを思い出し、私は答える。
「速やかに巣に戻しなさい」
と。

殆どの人が私の助言を真摯に聞いてくれる。
そして近所から梯子を借りてきて家族総出で雛を巣に戻している光景が眼に浮かぶ。
及び腰で梯子にしがみついているお父さんの姿が想像される。

『人って・・　優しいんだ』
人間への信頼感を取りもどす一瞬でもある。

しかしまれにではあるが癪に触る強烈な自称自然保護活動家が登場する。

先日も高校生の娘と母親がヒヨドリの雛を連れてきた。散歩中に捕まえたと言う。まだ不完全な飛翔力しかない雛を草むらまで追いかけて、保護したとおっしゃる。

「あなたの行為は略奪です。近くには必ず親鳥がいて見守っていたはずです。余計なおせっかいなんだ。この雛が一人前に巣立つために、絶対に必要な訓練だったのです。親子の命をかけた試練だったんだ」

そんな私の話には始めから聞く耳を持たない。

「猫に襲われたら可愛そうじゃないですか。先生何とかしてぇ」

挙句の果てが
「獣医さんって動物の味方でしょ。だったら仕事でしょ」
私に保護を強要し、ひたすら雛を置いて行こうとする。

私はこういう人たちを『自己満足型動物愛護論者』と呼んでいる。

『野生に対する基本は優しい無視です』

動物学者小原秀雄先生のこの言葉は余りにも重い。



      
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   <title>梅雨空に『普通』を思う【連載・動物病院の四季】</title>
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   <published>2009-04-11T14:14:15Z</published>
   <updated>2009-04-13T07:05:57Z</updated>
   
   <summary> 各地の梅雨入りのニュースが聞かれる頃になると、猫の避妊手術が増え始める。 春先...</summary>
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      <![CDATA[<img src="http://ishiguro-vet.com/pix/0411.jpg" alt="【連載・動物病院の四季】" width="470" height="350" />

各地の梅雨入りのニュースが聞かれる頃になると、猫の避妊手術が増え始める。

春先の発情で妊娠し、生まれた子猫の始末に困った飼い主が重い腰を上げる結果である。この時期の患者猫は半野良、餌だけ与えている屋外飼育の猫が多い。室内飼いの猫の場合は発情期の泣き声に飼い主が夜も眠れず、妊娠前に手術につれてくる。

電話での問い合わせ。
「避妊手術の予約ですが、いつが空いていますか」

さすがに最近は料金を最初に聞いてくる猫の飼い主が減った。
猫の避妊手術が定着しつつある。情報化時代のおかげかもしれない。

スタッフが電話口で猫の年齢を聞いている。
「出産したことありますか。お乳は張っていませんか」
しかしこちらから尋ねるのはここまでである。
「先月　出産したばかりですが、子猫はもういません」
もし飼い主の声が一段と低く、このように答えたならばもうそれ以上聞いてはならない。

子猫は何らかの方法で処分されている。飼い主の『悔い』がその語調に現れている。
毎年２回、それも数年間の『後ろめたさ』を語った飼い主もいた。

当院でも避妊手術料金は動物愛護と公共性を考慮して低く設定されている。最新の医療機器を駆使する近年の動物医療からすれば決して高額な費用ではない。

しかしこの金額を普通の人々の家計簿に載せてみる。
そして月々のやり繰りを想像してみればそんなに容易な金額ではない。

『犬を飼うも、猫を飼うもそれは個人の自由。でも動物を飼うことは動物に対する絶対的大権を付与されることだ。一方、銭も手間も要り、時には涙だって要る。その覚悟のない奴は動物なぞ飼うな』
私はこの原則を譲るつもりはない。

しかし・・家内がいつも私をたしなめる。
「優しくね。皆精いっぱいなんだから、それぞれの事情があるのよ・・」

サラリーマン時代、給料日前に５千円札を引き出しに見つけた家内の笑顔を思い出す。

私は今日もウロウロするばかりだ。
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